top of page

【歩行能力の改善に有用!】ロボットによる歩行訓練


 


ポイント

1) 歩行中の足関節運動を補助するロボット駆動型短下肢装具の治療効果を検証した。

2) ロボット駆動型短下肢装具を用いて歩行トレーニングを実施した群は、通常の装具機能

  による歩行トレーニングを実施した群と比較して、より歩行能力が改善した。

3) 歩行中のつま先の上がり具合や麻痺側下肢の安定性といった歩容にも良い影響を

  及ぼした。


脳卒中患者で問題となりやすい歩容

 脳卒中により神経の伝導路が障害されると、足関節の筋力低下や痙縮が引き起こされ、「Drop foot」と言われる足先が下垂し、足を引きずるような歩容を呈する。そのため、下肢を振り出す際は足先の引っかかりを防ぐように股関節や膝関節による過度な引き上げや、弧を描くように足を振り回しながら歩くような代償歩行が出現する。このような代償歩行は、歩行速度の低下や転倒リスクの増大、エネルギー消費量の増加などと関連することが指摘されている。


脳卒中患者の歩容に対する装具療法

 足関節の機能低下に起因した代償歩行に対しては、短下肢装具がしばしば用いられる(図1)。短下肢装具の効果を系統的に分析した先行研究では、歩行自立度の改善、歩行速度の増加、階段昇降能力の向上など、歩行に対して有益な効果を示すとされている。





 一方、近年ではロボットによる動力を利用した装具が開発されている。本記事で紹介するロボット駆動型短下肢装具(図2)は、遊脚相における足関節背屈の補助機能や、踵接地後のフットスラップを最小限に抑える機能を有している。




本論文の目的

 現在まで、ロボット駆動型短下肢装具を用いた歩行訓練について、質の高い効果検証はなされていない。したがって、本論文ではランダム化比較試験によるデザインを用い、ロボット駆動型短下肢装具を用いた歩行訓練の効果を検証することを目的とした。


方法

▷対象:地域在住の脳卒中患者19名とし、ロボット駆動型短下肢装具を用いた歩行

    トレーニング群(介入群)9名と、通常の装具機能での歩行トレーニング群

    (対照群)10名に振り分けた。

    取り込み基準→下垂足を有する者、介助なしで歩行可能である者

    除外基準→重度な拘縮を有する者、すでにリハビリを行っている者

▷実験期間:6ヶ月間

▷ロボット駆動型短下肢装具の特徴(図2):  

 モーターによる動力を利用し、足関節の背屈・底屈運動を補助する。

 装具の上から靴を履けるよう設計されており、薄くて軽量である。

▷介入方法

 少なくとも、週2回・計20回の介入を実施した。

 ①平地での歩行、②階段昇降、③平地での歩行をそれぞれ10分間実施した。

 一回の介入時間は、準備なども含めて1時間以内であった。

 介入群:ロボット駆動型短下肢装具による足関節運動の補助機能を受けながら、

     歩行トレーニングを実施した(機能:遊脚相全般における足関節背屈、

     遊脚相終期から立脚相初期における足関節底屈補助)。

 対照群:補助機能を持たせずに、足関節を中間位で固定した上で歩行トレーニングを

     実施した。

▷介入効果の評価

 評価時期は、介入前、介入後、介入後3ヶ月経過時点とした。

 効果判定には、歩行自立度の程度(Functional Ambulation Categories; FAC)、

 運動麻痺の程度(Fugl-Meyer Assessment; FMA)、筋緊張の程度(Modified Ashworth

 Scale; MAS)、バランス能力(Berg Balance Scale; BBS)、10m歩行速度、6分間歩行

 テスト、三次元動作解析装置による歩行分析で評価した。


結果

 介入群では対照群と比較して、3ヶ月経過時点で歩行自立度がより改善していた。運動麻痺と歩行速度は、介入後で介入群により高い改善効果を認めたが、3ヶ月経過時点では対照群とほぼ同等の結果を示した。

 三次元動作解析装置による歩行分析の結果、麻痺側における垂直床半力成分の増大、踵接地における足関節背屈角度、股関節伸展角度が増加した。一方で、対照群は、膝関節屈曲、足関節背屈角度の減少を認めた。

 本論文より、ロボット駆動型短下肢装具を用いた歩行訓練は、歩行自立度や運動麻痺、歩行速度の改善に加え、歩容などの質的な側面(麻痺側下肢の体重支持性向上や関節運動の改善など)の改善にも貢献することが明らかとなった。

 このようなロボットを駆使したリハビリテーションにより、関節運動を援助することで、神経可塑性による運動の再学習を強化できる可能性が示された。



タイトル

Randomized controlled trial of robot-assisted gait training with dorsiflexion assistance on chronic stroke patients wearing ankle-foot-orthosis


著者名

Ling-Fung Yeung, Corinna Ockenfeld, Man-Kit Pang, Hon-Wah Wai, Oi-Yan Soo, Sheung-Wai Li and Kai-Yu Tong


雑誌名

Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation. 2018 Jun 19;15(1):51. Doi: 10.1186/s12984-018-0394-7.



 

 武蔵ヶ丘病院リハビリテーション部では、リハビリに対する熱い情熱を持った仲間を募集しています。

 ・最新機器を駆使したリハビリテーションに興味がある!

 ・学会発表を経験してみたい!

 ・リハビリ専門医と共同して臨床や研究に関わりたい!

など、当院の取り組みに興味がある方はぜひ一度当院の最新設備に触れ、一緒に理想のリハビリ像について議論してみませんか?


【求人に関するお問い合わせ】

〒861-8003

熊本市北区楠7丁目15-1

武蔵ヶ丘病院 事務部 総務課 宛

TEL:096-339-1161(代)


<リハビリテーション部求人サイト>

その他、病院ホームページやFacebookなどでも各種情報を発信しております。

ぜひ一度ご覧下さい。

<武蔵ヶ丘病院オフィシャルサイト>

<武蔵ヶ丘病院Facebook>

<看護師求人サイト>


最新記事

すべて表示
bottom of page