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【歩行の左右非対称性を改善させる!】 左右分離型トレッドミルを用いた歩行トレーニングの効果に関する論文紹介


 

□論文情報

【タイトル】

Plantarflexion moment is a contributor to step length after-effect following walking on a split-belt treadmill in individuals with stroke and healthy individuals.


【著者名】

Lauzière S, Miéville C, Betschart M, Duclos C, Aissaoui R, Nadeau S


【雑誌名】

Journal of Rehabilitation Medicine. 2014 Oct;46(9):849-857. doi: 10.2340/16501977-1845.



〜目次〜

1. 論文について

  1-1. 本論文のポイント

  1-2. 本論文の目的

  1-3. 左右分離型トレッドミルとは?

  1-4. 左右分離型トレッドミルがもたらす歩行への影響

  1-5. 検討方法

  1-6. 結果

2. 脳卒中患者の歩行リハビリテーション

  2-1.  脳卒中患者の歩行障害およびリハビリテーションの実際

  2-2. 脳卒中患者に特徴的な歩容

1. 論文について


1-1. 本論文のポイント

 左右分離型トレッドミルによる歩行トレーニングが、脳卒中患者の歩行に与える影響について①歩行の左右非対称さと②関節の力の入り具合の2点に着目し検証した。

 結果①歩幅の左右非対称さは改善し、②足関節の蹴り出し力が増加した。

 また、麻痺側足関節の蹴り出し力の増加は、歩幅の左右非対称さの改善と関連していることが明らかとなった。


1-2. 本論文の目的

 左右分離型トレッドミルによる歩行トレーニングが脳卒中患者の歩容をどのように改善するのかを明らかにすることであった。

1-3. 左右分離型トレッドミルとは?

 左右分離型トレッドミルとは、ベルトが左右で2つに分割されたトレッドミルのことである(図1)。左右のベルトが独立しているため、それぞれを異なる速度で駆動させることが可能となる。



武蔵ヶ丘病院に導入されている左右分離型トレッドミル

1-4. 左右分離型トレッドミルがもたらす歩行への影響

 左右分離型トレッドミル上を、左右のベルトが同じ速度で歩行中に、左右を異なる速度に変化させると直後はぎこちない歩きになる。しかし、左右の速度が違う状態で10〜15分間継続して歩行することにより適応し、滑らかで左右対称的な歩行を獲得するとされている。

 再度左右のベルトを同じ速度に戻しても「左右異なる速度のベルト上での左右対称な歩行」が持続するとされている。この持続効果の存在は、脳や脊髄などの中枢神経系が新たな運動パターンを学習し、記憶したことを意味していると考えられている。

1-5. 検討方法

▷対象:脳卒中患者20名(基準は自力歩行が可能であること、発症から6ヶ月以上経過して

 いること)。

▷課題(図2):

  ① 左右のベルトを分離させない状態でのトレッドミル歩行を3分間

  ② 左右のベルトを分離させた状態でのトレッドミル歩行を6分間

  ③ ①の状態でのトレッドミル歩行を3分間

▷計測機器:

 三次元動作解析装置、床反力計①-③のそれぞれの歩容を計測した。

▷分析に用いたパラメーター:

 Step length symmetry ratio(歩幅の非対称性)、股関節最大伸展モーメント(股関節の蹴り出し力)、足関節最大底屈モーメント(足関節の蹴り出し力)




1-6. 結果

 課題③の歩容で歩幅の左右非対称性の改善と、麻痺側足関節の蹴り出し力の増加を認めた。また、左右非対称性の改善には、麻痺側足関節の蹴り出し力の増加が関連しているという結果が得られた。

 本論文より、左右分離型トレッドミルによる歩行訓練は、足関節の蹴り出し力を増加させることで、左右非対称な歩行を改善させる効果があることが示唆された。麻痺側足関節の蹴り出し力は脳卒中患者で低下しやすく、歩行速度の低下やステップ長の短縮などの原因とされている。左右分離型トレッドミルによる歩行トレーニングは、脳卒中患者の麻痺側足関節の蹴り出し力の増加に寄与し、左右非対称性を改善するための治療戦略として有用であると考えられた。


2.脳卒中患者の歩行リハビリテーション


2-1. 脳卒中患者の歩行障害およびリハビリテーションの実際

 脳卒中発症後における歩行能力の改善の程度は、社会参加や心臓血管系機能の改善、脳卒中再発リスクの軽減などと関連することが報告されている。また、脳卒中患者の多くは、歩行能力の回復に主要な関心を抱いている。そのため、どのようなリハビリテーションが脳卒中患者の歩行能力の改善に有効であるか、これまで数多くの研究報告がなされてきた。

2-2. 脳卒中患者に特徴的な歩容

 脳卒中患者は、顕著に左右非対称な歩容を呈すとされている。

▷時間的な非対称性:

 非麻痺側下肢の振り出し時間、麻痺側下肢の片脚で支える時間の短縮

▷空間的な非対称性:

 非麻痺側下肢の歩幅の短縮

 歩容の非対称性は、歩行速度や歩行効率、動的なバランス能力の低下と関連しており、歩行に負の影響を与えるため安定した歩行を阻害することが指摘されている。リハビリテーション場面において、左右非対称の改善は重要な課題となるが、臨床上その改善にはしばしば難渋する。この左右非対称性の改善に効果的なアプローチとして近年注目されているのが、本論文で紹介した左右分離型トレッドミルを用いた歩行トレーニングである。





 

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