タイトル:
Effectiveness of Gait Exercise Assist Robot (GEAR) for stroke patients with hemiplegia
著者名:
Hirano S, Kagaya H, Saitoh E, Sonoda S, Tanabe S, Katoh M, Yamada J, Tanino G, Suzuki A, Itoh N
雑誌名:
Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science. 2017; 8: 71-76.
ポイント
1) 脳卒中片麻痺患者に対するGEARを用いた歩行訓練が、歩行自立度の改善に与える影響を調査した。
2) GEARを用いた歩行訓練を実施した群は、通常の歩行訓練を実施した群と比較して、歩行が自立するまでの日数が有意に短かった。
3) GEARを用いた歩行訓練は、脳卒中片麻痺患者の歩行自立度をより効率的に改善させることが示された。
GEARとは?
GEARとは、藤田医科大学とトヨタ自動車が共同開発した「リハビリテーション支援ロボットWelwalk」の開発段階における機器の名称を指す。2007年より共同研究開発プロジェクトを開始し、歩行練習アシスト(Gait Exercise Assist Robot:GEAR)の名称で研究・開発を進めてきたもので、2016年12月に”Welwalk”の名称で医療機器承認を受け、2017年9月よりレンタル販売が開始となった(図1)当院においても本機器を導入し、積極的な臨床応用を試みている。
本機器は、長下肢ロボット、低床型トレッドミル、安全懸架装置、ロボット免荷装置、患者用モニタ、操作パネルから構成される。実際の訓練は、長下肢装具型のロボットを麻痺側下肢に装着し、トレッドミル上で歩行練習を行う。本機器の特徴は、パラメーター調整により難易度を調整可能である点、通常の装具歩行練習では提示困難な様々なフィードバック方法を有する点などである。
本論文の目的
GEARを用いた歩行練習の効果を明らかにするために、GEAR+通常のリハビリテーションを実施した群(以下,GEAR群)と通常のリハビリテーションのみを実施した群(以下,対照群)の歩行能力を介入前後で比較した。
方法
対象者の取り込み基準:
初発テント上脳内出血または脳梗塞による片麻痺患者、発症から60日以内、年齢20-75歳
歩行FIM3点以下、SIAS下肢運動項目合計点6点以下、長下肢装具使用
対象者の除外基準:
心機能、呼吸機能障害によって歩行練習に制限をきたしている者、高血圧を有する者(収縮期血圧:160mmHg以上,拡張期血圧:100mmHg以上)、重度の関節拘縮ならびに変形を有する者、視覚および聴覚障害を有する者、歩行に影響する整形外科的疾患または神経疾患の既往を有する者
介入方法:
GEAR群は、GEARを用いた歩行練習を1日に40分、1週間に5回の頻度でGEARを用いた歩行練習を実施した。パラメーター調整やフィードバック機能の活用は、主治医または担当セラピストによって決定された。期間は、平地歩行を短下肢装具装着下で監視レベルにて歩行できるようになるまで実施した。その他、通常のリハビリテーション(理学療法,作業療法,言語聴覚療法)がGEARを用いた歩行練習と併せて1日3時間,週6回行われた。
対照群は、通常のリハビリテーション(理学療法,作業療法,言語聴覚療法)を1日3時間、週6回行われた。
評価項目:
歩行FIM点数、SIAS下肢運動項目、10m歩行速度、歩行FIM改善効率(5−介入前の歩行FIM/歩行FIM5に達するまでの日数)
結果
GEAR群と対照群の患者属性(年齢,障害側,発症までの期間など)および介入前の歩行FIM点数,SIAS下肢運動項目に有意差は認めなかった。
介入後の歩行FIM改善効率は、対照群と比較して、GEAR群で有意に高値を示した。
介入後の歩行FIM点数、SIAS下肢運動項目、10m歩行時間は両群で有意差を認めなかった。
GEARを用いた歩行訓練は、歩行自立度をより効率的に改善させることが明らかとなった。
本結果は、脳卒中片麻痺患者に対するGEARを用いた歩行訓練の有用性を示唆するものである。
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