❏論文情報
【タイトル】
The effects of surface neuromuscular electrical stimulation on post-stroke dysphagia: A systematic review and meta-analysis
【著者名】
Chen YW, Chang KH, Chen HC, Liang WM, Wang YH, Lin YN
【雑誌名】
Clinical Rehabilitation. 2016 Jan;30(1):24-35. doi: 10.1177/0269215515571681.
【引用元情報】
1)社会福祉法人 聖隷福祉事業団 浜松市リハビリテーション病院
2)エクセレントパートナー株式会社
~目次~
1.論文について
1-1. 論文のポイント
1-2. 本論文の目的
1-3. 検討方法
1-4. 結果
- 神経筋電気刺激療法と従来の嚥下訓練を併用した結果
- 単独実施の結果
- 発症時期との相関性
1-5. 本論文の限界点
2.嚥下障がいについて
2-1. 嚥下障がいとは?
2-2. 嚥下障がいに対するリハビリテーション
- 従来のリハビリテーション
- 神経筋電気刺激療法
1. 論文について
1-1. 論文のポイント
「神経筋電気刺激療法」が嚥下訓練にどのような影響をもたらすのか。
次の3つの方法で結果を比較した。
①通常の嚥下訓練
②加えて神経筋電気刺激療法を実施
③神経筋電気刺激療法のみ
検討の結果、神経筋電気刺激療法と嚥下訓練を併用した場合、単独の嚥下訓練および単独での神経筋電気刺激療法の実施よりも”効率的”であった。また、単独での嚥下訓練と単独での神経筋電気刺激療法では差を認めなかった。
1-2. 本論文の目的
神経筋電気刺激療法は嚥下機能の改善に有用である、との研究報告が存在する。
しかしパーキンソン病患者や頭頸部癌患者なども含まれており、脳卒中患者に限った内容ではなかった。
また、どのような訓練内容が効果的であるかといった点も明らかとされていない。今回紹介する論文は、脳卒中患者に対する電気刺激療法の有効性について訓練内容にも着目し、検討している。
1-3. 検討方法
現存する「脳卒中患者に対する神経筋電気刺激療法の効果」を検証した研究報告を収集し、再び解析を行う「システマティックレビューおよびメタ解析」という研究手法を用いている。
~論文収集の条件~
①研究デザインがランダム化比較試験および準ランダム化比較試験である
(対象者をランダムに介入群と非介入群に分けて2つの群で比較すること)
②研究の対象者が脳卒中による嚥下障がいを呈するものである
③嚥下障がいに対する神経筋電気刺激療法の治療効果に焦点を当てた研究内容であること
1-4. 結果
・神経筋電気刺激療法と従来の嚥下訓練を併用した結果
8件の研究報告が解析対象として抽出された。それぞれの研究報告における効果判定の指標は「Actual Nutrition Status Scale」「Functional Oral Scale」などの定性的評価および「嚥下造影検査による咽頭通過時間、咽頭偏位」などの定量的評価が用いられていた。
243名の対象者を含む6件の研究報告を対象に解析した結果、神経筋電気刺激療法と従来の嚥下訓練を併用した訓練は、単独での嚥下訓練より、効果的であることが明らかになった。
・単独実施の結果
126名の対象者を含む3件の研究報告を対象に解析した結果、単独での神経筋電気刺激療法は、単独での嚥下訓練と比較して、改善の程度に差は認められなかった。
・発症時期との相関性
補足として、発症からの時期について影響があるかを分析した。結果、急性期/亜急性期か慢性期かに関わらず、一定の効果を認めている。一般的に慢性期は回復が最も起こりにくい時期とされている。
しかし、嚥下訓練と神経筋電気刺激療法を併用することで、慢性期であっても十分回復を見込める可能性があると考えられる。
(注意点:補足的分析の対象となる研究報告は4件と少数のため、解釈には注意が必要である)
1-5. 本論文の限界点
* 質が低いとされる研究が複数含まれていた。
* 介入方法や結果、評価が大きく異なる研究が含まれていた。
* 短期的な介入効果(2-4週間)を示した研究であるため、長期的な効果は不明である。
2.嚥下障がいについて
2-1. 嚥下障がいとは?
嚥下障がいとは食べ物の飲み込みが困難になる障がいのことである。脳卒中を発症した患者の多くが併発されているとされている。脳卒中の回復とともに嚥下障がいも改善の兆しを見せるが、約50%は慢性化して嚥下障がいが残存するとの報告も存在する。
嚥下障がいは、「栄養失調」・「脱水」・「誤嚥性肺炎」など様々な合併症を引き起こし、放っておくと命を脅かす危険性がある。嚥下障がいを改善するためのリハビリテーションは極めて重要である。
2-2. 嚥下障がいに対するリハビリテーション
・従来のリハビリテーション
嚥下障がいに対するリハビリテーションは嚥下に関わる感覚機能や筋力の強化を目的とした、摂食訓練や嚥下体操が行われてきた。(図1参照)
・神経筋電気刺激療法
近年、新たな治療法として "神経筋電気刺激療法" が注目されている(図2参照)。電気刺激を用いて嚥下に関わる末梢神経を刺激することで、飲み込む力の強化・促通を図っていく。
【本原稿の執筆者】
藤井 廉 【 Ren Fujii 】
所属:リハビリテーション部
役職:主任臨床研究員
資格:理学療法士、修士号(健康科学)
臨床研究員として、医師・セラピストと共同し研究活動を推進している。研究内容は、慢性疼痛、動作解析、リハ栄養、高齢患者の運動習慣と行動変容など多岐に渡る。「良質な医学情報をたくさんの人に触れてほしい」という想いから、「むさリハ研究所」を立ち上げ、管理・運営を行っている。
武蔵ヶ丘病院リハビリテーション部では、リハビリに対する熱い情熱を持った仲間を募集しています。
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