三次元動作解析装置による歩行動作中の動作時筋緊張の定量的評価

タイトル:

Quantitative assessment for flexed-elbow deformity during gait following botulinum toxin A treatment

著者名:

Tanikawa H, Kagaya H, Inagaki K, Kotsuji Y, Suzuki K, Fujimura K, Mukaino M, Hirano S, Saitoh E, Kanada Y

雑誌名:

Gait & Posture. 2018; 62: 409-414.


ポイント

1) 三次元動作解析装置を用いて、歩行時の肘関節屈筋の痙縮評価を試みた。

2) ボツリヌス治療後、経過とともに安静時筋緊張と動作時筋緊張は有意に軽減したが、安静時筋緊張のほうが治療の持続効果が長かった。

3) 安静時筋緊張に異常は認めなかったが、動作時筋緊張の亢進を認めた症例も存在した。

4) 筋緊張の評価は、安静時に限らず三次元動作解析装置を用いて動作時の筋緊張も評価する必要がある。


脳卒中後に起こる痙縮

 痙縮は脳卒中後の症状として一般的であり、上肢は肘関節屈曲パターンに陥りやすい。この症状は上位運動ニューロンの障害の一つとされ、患者の基本動作や日常生活動作を阻害する要因となる。

 臨床場面において痙縮の評価には、Modified Ashworth Scale (MAS)が用いられる。MASは順序尺度を用いた指標であるため、多様な痙縮の病態を容易に評価することができる。しかしながらMASの評価方法の信頼性を疑問視する先行研究がいくつか存在する。また、臨床では安静時筋緊張に異常を認めなくても、起立や歩行などの動作時に不随意的な肘関節屈曲パターンを認める場合が存在する。これまで痙縮に関する様々な報告がなされているが、動作時の筋緊張を定量的に評価した報告はない。


本論文の目的

 A型ボツリヌス毒素製剤による治療(ボツリヌス治療)を施行した脳卒中片麻痺患者における歩行時の肘関節屈曲の程度を、三次元動作解析装置にて縦断的に評価することである。


方法

対象:

 脳卒中片麻痺患者(CVA群)20名,健常成人(健常群)25名

対象者の取り込み基準:

 片麻痺の診断を受けている者、発症後5ヶ月以上経過している者、痙縮によって歩行中に肘関節の屈曲が生じる者、装具なしで歩行可能な者

対象者の除外基準:

 痙縮以外の原因による肘拘縮を有する者、心血管系および進行性神経疾患の既往を有する者、整形外科関連の手術の既往を有する者

ボツリヌス治療:

 対象筋は、上腕二頭筋,手指屈筋,手根屈筋,浅指屈筋,上腕筋,大胸筋,長母指屈筋,深指屈筋,長掌筋とした経験豊富な理学療法士が患者の筋緊張・歩行動作などを評価し、対象筋を選択した。


評価項目:

➢ 肘関節屈筋のMAS

➢ 肘関節可動域(屈曲・伸展),歩行速度を計測した.

➢ 歩行中の肘関節屈曲角度(最大・最小)

  →三次元動作解析装置を用いた.カラーマーカーを肩峰,上腕骨外側上顆,尺骨茎状突起に貼付した.肘関節屈曲角度の定義は,上腕骨外側上顆と肩峰を結ぶベクトルと上腕骨外側上顆と尺骨茎状突起を結ぶベクトルによって形成される角度から,180°引いたものとした.


評価時期は、注射前,注射2週後,注射6週後,注射12週後で評価した.


結果

 一部の患者に安静時筋緊張に異常は認めなかったが、歩行時に明らかな肘関節屈曲(動作時筋緊張の亢進)を示した症例を認めた。

 ボツリヌス治療前の肘屈筋のMASの中央値は2(可動域全域で抵抗感あり)であったが、注射後2週以降の中央値は1+(軽度亢進)と有意な減少を示した。また、その効果は12週後まで持続していた。

 歩行中の肘関節屈曲角度は、健常群で最大41.0±9.5°,最小8.0±3.5°であった。一方、CVA群の最大肘屈曲角度は、注射前78.2±15.5°,注射2週後60.6±15.9°,注射6週後66.6±16.2°,注射12週後で68.2±16.2°であり、最小肘屈曲角度は、注射前73.3±16.9°,注射2週後52.8±21.1°,注射6週後59.8±19.8°,注射12週後で61.0±20.2°であった。注射前と比較して、注射2週後、注射6週後で有意な角度の減少を認めたものの、12週後に有意差は認めなかった。

 本結果において、安静時筋緊張(MAS)と動作時筋緊張(歩行中の肘関節屈曲)はボツリヌス治療によって改善したが、安静時筋緊張は注射後12週まで効果が持続したものの、動作時筋緊張は6週時点で注射前の状態に戻った。安静時筋緊張と動作時筋緊張の臨床症状はしばしば乖離する。そのため、MASによる安静時筋緊張の評価に加え、三次元動作解析装置を用いて動作時の筋緊張を評価することが重要であると考えられた。

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