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脳卒中片麻痺患者における体幹機能と皮質網様体路の関係性:拡散テンソル画像を用いた分析

タイトル:

Relationship between trunk function and corticoreticular pathway in stroke hemiplegic patients:

Analysis using probabilistic tractography


著者名:

Katsunori Kubota, Makoto Tamari, Ryunosuke Hayakawa, Narishige Wakisaka, Masahide Endo, Hitoshi Maruyama


雑誌名:

Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science. 2019


ポイント

1) 本研究の目的は,脳卒中片麻痺患者における皮質網様体路の損傷程度と体幹機能の関係性を明らかにすることであった.

2) 皮質網様体路が損傷した群と損傷していない群で体幹機能を比較したところ,両群に有意な違いは認めなかった.


脳卒中患者における体幹機能の問題

一般的に,脳卒中片麻痺患者の多くは,体幹機能に障害を有することが報告されている.この体幹機能障害は,歩行能力や日常生活動作に加え,予測的な姿勢調整やバランス能力に悪影響を及ぼす.そのため,臨床場面における体幹機能の評価は重要である.実際に,体幹機能の臨床評価にはTrunk Control Test(TST)やFunctional Assessment for Control of the Trunk(FACT)が広く用いられている.


体幹筋を支配する神経線維

体幹筋を支配する主な神経線維は,前皮質脊髄路(CST)と皮質網様体路(CRP)であり,その中でもCRPは体幹筋のほとんどの神経支配を担うと考えられている.近年,磁気共鳴画像(MRI)の拡散テンソルトラクトグラフィー(DTT)という手法を用いて,CRPを可視化する試みがなされている.先行研究では,DTTによって分析されたCRPの損傷程度は,上下肢の近位筋の筋力低下と有意に関連することが明らかとされている.しかしながら,CRPの損傷程度と体幹機能との関連性は明らかにされていない.


本論文の目的

DTTを用いてCRPを可視化し,CRPの損傷程度とTCT,FACTとの関連性を明らかにすること.


方法

症例

初回発症の脳卒中片麻痺患者17名

評価項目

入院時評価:

基本的属性(年齢,性別,発症から入院までの期間など)

体幹機能(TCT,FACT)

超音波画像診断(外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の筋厚)

MRI画像(CRP,CSTの連続性)

統計解析

CRPの連続性の観点から,連続性が保たれている症例を非損傷群,連続性が保たれていない症例を損傷群に分類し,基本的属性,体幹機能,超音波画像診断,の結果を二群間で比較した.

結果

当初の仮説に反し,CRPの損傷の程度によって,体幹機能に有意な差異は認められなかった.

本研究では,体幹機能をTCTやFACTによる順序尺度によって評価した.そのため,代償運動や筋緊張の異常などの詳細な体幹機能障害を反映しきれなかった可能性がある.また,超音波画像診断の結果に有意差がなかった要因について,脳卒中片麻痺患者の体幹筋は急性期から慢性期の移行期に萎縮することが報告されている.ゆえに,縦断データに基づき体幹機能を評価する必要があったのかもしれない.

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