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反復的末梢磁気刺激は,効率的に嚥下関連筋を強化できる!

タイトル:

Repetitive peripheral magnetic stimulation for strengthening of the suprahyoid muscles: A randomized controlled trial


著者名:

Mao Ogawa, Kagaya Hitoshi, Yuki Nagashima, Shiho Mori, Seiko Shibata, Yoko Inamoto, Yoichiro Aoyagi, Fumi Toda, Megumi Ozeki, Eiichi Saitoh

雑誌名:

Neuromodulation. 23(6): 778-783. 2020

ポイント

1) 嚥下障害患者に対するトレーニングとして広く用いられる「Shaker Exercise」と,「反復的末梢磁気刺激装置を用いた筋力増強訓練」の訓練効果を比較検討した.

2) 「反復的末梢磁気刺激装置を用いた筋力増強訓練」を実施した群でのみ,頚部屈曲筋力の有意な増加を認めた.

Shaker Exerciseってなに?

嚥下障害患者のリハビリテーションでは,Shaker Exerciseが広く用いられている.これは,仰臥位で頭部挙上を行う訓練のことであり,以下の2種類の運動によって構成される.

1) 等尺性運動:1分間頭部挙上位を維持し,1分間の休憩を挟みながら3回繰り返す.

2) 等張性運動:頭部挙上運動を30回×3セット繰り返す.

→1),2)の運動を毎日6週間実施する.

このShaker Exerciseは,舌骨上筋の筋力増強をもたらし,舌骨の挙上や上部食道括約筋の開大を改善するとされている.しかしながら,いくつかの問題点もあり,運動負荷が大きいがゆえに実施困難な者が存在することや,本来の目的である舌骨上筋よりも早期に胸鎖乳突筋が筋疲労を起こすことなどが指摘されている.

嚥下障害に対する物理療法

嚥下障害患者に対する電気刺激療法も広く用いられる手法であり,科学的根拠に基づく治療として確立されつつある.しかしながら,電気刺激を与える際に皮膚に痛みを伴う場合がある.一方,近年電気刺激に代わる機器として,反復的末梢性磁気刺激(Repetitive peripheral magnetic stimulation; rPMS)が注目されている.rPMSとは,磁束により作られた「渦電流」が筋線維を刺激し収縮させるシステムであり,電気刺激療法と比較して痛みがまた,洋服の上からでも刺激することが可能である.


本論文の仮説と目的

仮説は,舌骨上筋への反復的末梢磁器刺激(rPMS)は,Shaker exerciseの代替となり得ると立てた.

本研究の目的は,無作為化比較対象試験において,舌骨上筋のrPMSを用いた筋力増強訓練とShaler exerciseとの訓練効果を比較することとした.

方法

対象:

24名の健常成人を取り込み,Shaker exerciseを実施する群(SE群)とrPMSを実施する群(rPMS群)にランダムに割り付けた.

SE群の介入方法:

等尺性運動として,1分間頭部挙上位を維持し,1分間の休憩を挟みながら3回繰り返すした.また,等張性運動として,頭部挙上運動を30回×3セット繰り返した.介入期間は2週間とした.

rPMS群の介入方法:

舌骨上筋に対して刺激した.刺激周波数は30Hz,1回の刺激時間は2秒間,一時停止時間は8秒間の設定で10回を1セットとし,3セット×3回(1日合計90回)実施した.介入期間は2週間とした.

評価項目:

以下の項目を介入前後で計測した.

頚部屈曲筋力,開口力,舌圧,舌骨筋と喉頭筋の筋疲労,舌骨の変位量と上部食道括約筋の開口幅,介入の実施率,疼痛の程度

結果

両群における全ての患者は,脱落することなく本研究のプロトコルを完遂した.頚部屈曲筋力は,rPMS群でのみ有意に改善した.開口力は両群で改善傾向を示したが,有意差はなかった.舌圧は,両群で有意な改善を認めた.その他の評価項目について,有意差は認めなかった.本研究より,rPMSは,Shaker exerciseよりも効率的に頚部屈曲筋力を強化できる可能性が示された.

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