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執筆者の写真むさリハ研究所

脳卒中患者の歩行時の下肢協調運動パターンに影響する要因はなに?

タイトル:

Gait kinematics and physical function that most affect intralimb coordination in patients with stroke


著者名:

Kaoru Sakuma, Hiroshige Tateuchi, Satoru Nishishita, Yusuke Okita, Ryosuke Kitatani, Yumiko Koyama,

Satoko Ibuki and Noriaki Ichihashi


雑誌名:

NeuroRehabilitation. 45(4): 493-499.


ポイント

1) 脳卒中患者における歩行時の大腿―下腿の協調運動パターンに影響を与える要因について,運動学的要因と身体機能に着目して調査を行なった.

2) 立脚期における麻痺側下肢の膝関節伸展角度ならびに麻痺側の膝伸展筋力が,大腿―下腿の協調運動パターンに影響を及ぼすことが明らかとなった.

3) 立脚期における膝関節機能に対する介入によって,大腿−下腿の協調運動パターンを改善し得る可能性が示された.


脳卒中患者の協調運動障害

脳卒中患者の特徴的な運動障害として,四肢の協調運動障害が挙げられる.例えば,正常歩行において,安定性を維持しながら身体を前方へ推進させるために,下肢の協調的な運動パターンが要求される.一方で,脳卒中患者では,筋緊張の亢進によるStiff-knee gaitなどによって,下肢の協調的な運動パターンが阻害され,それにより歩行能力が制限される.

具体的に,正常歩行の場合は立脚後期にかけて大腿―下腿の協調運動パターンが高まる戦略をとるが,脳卒中患者は反対に立脚後期にかけて協調パターンが低下する戦略をとることが報告されている.しかしながら,協調運動パターンに影響する要因が明確となっていないため,歩行訓練場面で介入内容が曖昧となりやすい.


本研究の目的

本研究は,脳卒中片麻痺患者における歩行時の大腿―下腿協調運動パターンに影響を及ぼす運動学的要因と身体機能を明らかにすることを目的とした.我々は,協調運動パターンの指標として大腿―下腿のContinuous relative phase(CRP)を用いた.


方法

対象:

15名の脳卒中片麻痺患者が本研究に参加した.


使用機器:

三次元動作解析装置(VICON MX)・床反力計(Force plate 9286A)


動作課題:

快適速度での歩行

※短下肢装具の使用:×,歩行補助具(T-caneなど)の使用:○


運動学的解析:

歩行速度

立脚期における最大股関節伸展角度・最大膝関節伸展角度・最大足関節背屈角度

遊脚期における最大股関節屈曲角度・最大膝関節屈曲角度

協調性の指標:大腿―下腿のCRP(推進期と制動期におけるCRPをそれぞれ算出した)

身体機能評価:

Fugl-Meyer motor assessment・modified Ashworth scale・関節可動域(足関節背屈)

筋力(股関節屈曲・膝関節屈曲,伸展・足関節背屈)

結果

歩行能力と大腿―下腿のCRPの関係性について,推進期における非麻痺側のCRPが歩行速度に影響した.また,立脚期における麻痺側膝関節伸展角度は,推進期における麻痺側のCRPに影響することが示された.さらに,麻痺側膝関節伸展筋力は,推進期における麻痺側と非麻痺側のCRPに影響することが明らかとなった.

一連の結果から,立脚期における膝関節機能を向上することで,協調的な運動パターンが改善し,結果として歩行速度が向上する可能性が示された.

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