高齢者に対してアクティブラーニングに基づくヘルスリテラシーに関する教育的介入は有用か?

タイトル:

Effects of Active Learning on Health Literacy and Behavior in Older Adults: A Randomized Controlled Trial

著者名:

Kazuki Uemura, Minoru Yamada, Hiroshi Okamoto

雑誌名:

J Am Geriatr Soc. 66: 1721-1729. 2018


ポイント

1) 高齢者に対して,ヘルスリテラシーや健康行動に関するアクティブラーニングを用いた教育的介入を導入し,その効果を検証した.

2) 運動,食事,栄養,認知的活動をテーマにしたアクティブラーニングプログラムを週1回90分,2ヶ月間実施した.

3) 介入によって,ヘルスリテラシーや認知機能,身体機能などの向上を認めた.


ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーとは,「健康情報を入手し,理解し,評価し,活用するための知識,意欲,能力であり,それによって,日常生活におけるヘルスケア,疾病予防,ヘルスプロモーションについて判断したり意思決定をしたりして,生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの」と定義されている.このヘルスリテラシーは加齢によって低下することが指摘されており,その低下は「慢性的な疾病の自己管理能力の低下」や「死亡リスクの増加」など,様々な要因に影響を及ぼすことが明らかとされている.その一方で,ヘルスリテラシーが高い高齢者は,十分な身体活動量の確保やバランスの整った食生活の維持,健康的なライフスタイルを送れていることが報告されている.それゆえ,ヘルスリテラシーは高齢者の健康行動を促進し,さらには身体機能や認知機能を向上させる要因として,近年注目されている.


ヘルスリテラシーを向上させるためには?

高齢者のヘルスリテラシーを向上させるための介入として,「健康教育(Health Education)」が注目されているものの,エビデンスは限られている.著者らは,受け身で健康教育を受けるのではなく,学習者が能動的に考え,活動に参加するようなアクティブラーニングに着目し,健康教育プログラムを立案した.能動的に学習する姿勢が,健康情報へのアクセスや活用に関する動機付けを促し,健康的なライフスタイルの形成や良好な健康状態に寄与すると考えられる.


本論文の目的

無作為化比較試験にて,アクティブラーニングによる健康教育プログラムが,地域在住高齢者のヘルスリテラシー,認知機能,身体機能,身体活動,食生活習慣に及ぼす影響を調査すること.


方法

対象:

65歳以上の地域在住高齢者を介入群(42名)と対照群(42名)に割り付けた.


除外基準は,介護保険の要支援・要介護者,ADLに支障をきたすような障害を有する者,MMSEが23点以下の者,身体活動を制限する可能性のある重度の心疾患・呼吸器疾患・筋骨格系疾患を有する者とした.


介入方法:

介入群に対して,1回90分,週1回のアクティブラーニングプログラムを24週間実施した.プログラムのテーマは以下の通りである.

1 オリエンテーション

2 歩き方について

3 屋内でのエクササイズ

4 筋力増強訓練(下肢編)

5 情報を収集するための基本的なスキル

6 栄養障害の基本的な知識

7 食事と栄養による筋力増強

8 筋力増強訓練(上肢編)

9 自宅での認知機能エクササイズ(アイディアの共有)

10 自宅での認知機能エクササイズ(練習)

11 栄養障害の予防策

12 プログラムのおさらい

13 栄養成分表示の理解

14 高齢者のためのスポーツ・レクリエーションについて

15 情報を収集するための基本的なスキル

16 屋外での歩行練習について

17 健康促進に関するプレゼンテーション

18 歩行マップの作成

19 エクササイズによる身体機能への影響について

20 ワークショップ①(高齢者における健康問題)

21 ワークショップ②(高齢者における健康問題)

22 ワークショップ③(高齢者における健康問題)

23 エクササイズを継続するための方法

24 全体のおさらい


また,参加者は,プログラムなどを通して得たアイディアや知識をもとに,行動変容に向けた計画を立案し,その計画に基づき健康行動を実践した.

一方,対照群に対して,プログラムによる介入は施されなかった.


評価項目:

ヘルスリテラシーの評価:

Health Literacy Scale-14(HLS-14),European Health Literacy Survey Questionnaire(HLS-EU-Q16)

認知機能:

ウェクスラー成人知能検査,スパンテスト,意味流暢性課題,言語流暢性課題Scenery Picture Memory Test(SPMT)

身体機能:

握力,歩行速度,Timed Up & Go test(TUG)

身体活動:

3軸加速度計による活動量計測

食生活:

食品摂取多様性評価票


結果

ヘルスリテラシーについて,介入群でHLS-14の「総合点数」,「伝達的ヘルスリテラシー」,「批判的ヘルスリテラシー」,HLS-EU-16の「疾病予防スコア」に有意な改善を認めた.また,認知機能について,介入群で「意味流暢性課題」と「SPMT」に,身体機能について,「歩行速度」と「TUG」に有意な改善を認めた.さらに,身体活動について,「歩数」と「身体活動レベル」に,食生活について,「食品摂取多様性スコア」と「食品摂取頻度スコア」に有意な改善を認めた.

本研究によって,健康行動に関するアクティブラーニングプログラムは,健康情報の活用や意思決定に対する個人の効力感や意欲を向上させ,健康的なライフスタイルの確立や身体的・認知機能の向上を促進する可能性が示された.

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