視診による歩行観察の信頼性について

タイトル:

Influence of clinical experience and instruction on typical cases on the inter-rater reliability of observational gait analysis


著者名:

Hiroki Tanikawa, Kei Ohtsuka, Junya Yamada, Masahiko Mukaino, Fumihiro Matsuda, Hitoshi Kagaya, Eiichi Saitoh, Yoshikiyo Kanada, Shunji Hashimoto


雑誌名:

Japanese Journal of Comprehensive Rehabilitation Science. 2019


ポイント

1) 視診による歩行分析の信頼性を調査した.

2) 事前に指導を受けた理学療法士(指導群)と,そうでない理学療法士(非指導群)が片麻痺患者の歩行動画を観察し,歩行の重症度判定を行った.

3) 歩行観察の分析結果の信頼性は指導群・非指導群ともに低かったが,事前に指導を受けることによって信頼性が向上することが明らかとなった.


視診による歩行観察

リハビリテーションにおいて,歩行分析は「介入指針の決定」や「介入の効果判定」のために広く用いられている.近年では,異常歩行を定量化するための機器による歩行分析が普及しているものの,費用対効果などの観点から視診による歩行観察が主流である.しかしながら,視診による歩行分析は主観的側面が強く影響することから,信頼性に乏しいことが報告されている.


視診による歩行観察の信頼性に関する先行研究

視診による歩行観察の信頼性を向上させるために,いくつかの歩行観察尺度が開発されている.これらの歩行観察尺度は,主に歩行周期における関節角度を評価するものであるが,特定の異常歩行パターンや重症度の判定は含まれていない.また,信頼性を向上させるための具体的な方法などは示されていない.


本論文の目的

脳卒中片麻痺患者の歩行の重症度を視診にて分析した際の検者内信頼性を検討することである.また,事前に典型的な異常歩行パターンの歩行を観察することによる指導的介入が信頼性に影響を及ぼすかどうかを調査した.


方法

症例:

脳卒中片麻痺患者の典型的な異常歩行である「ぶん回し歩行」,「急激な膝関節伸展」を呈する脳卒中患者30名のビデオ映像が用いられた.

研究対象:

理学療法士30名が,以下の通りに割り付けられた.

指導群15名:事前に脳卒中片麻痺患者の典型的な歩行パターンの映像を見た上で重症度を判定した.

非指導群15名:事前に映像を見ることなく重症度を判定.

また,各群を臨床経験5年目以上,5年目以下のサブグループに群わけした.

手順:

1. 両群に対し,異常歩行パターンの定義が説明された.

2. 指導群のみ,事前に典型的な脳卒中片麻痺患者の歩行映像を確認できる機会が与えられた.歩行パターンの重症度を識別できるよう,繰り返し動画を確認することが許容された.

3. 両群で,片麻痺患者の歩行映像を用いた歩行観察が実施された.30症例の映像について,それぞれ15秒間観察する時間が与えられた.その後,異常歩行の重症度を5段階で判定するよう求められた.


評価項目:

重症度判定の一致率を調査した.

結果

「異常歩行パターンの有無の判定」については,高い一致率を認めたが,「5段階による重症度の判定」の一致率は低かった.また,非指導群における臨床経験5年目以上の理学療法士でも,一致率は低かった.また,臨床経験の年数に関わらず,事前に典型的な歩行映像を確認することによって,信頼性が高まることが確認された.

本研究より,理学療法士が視診による歩行観察を実施する際は,事前に典型的な片麻痺患者の歩行パターンを分析するような研修を受講しておくことによって,より信頼性の高い評価を行うことが可能になると考えられる.

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