脳卒中患者における皮質脊髄路の拡散テンソルトラクトグラフィーを用いた運動機能の予後予測

タイトル:

Motor outcome prediction using diffusion tensor tractography of the corticospinal tract in large middle cerebral artery territory infarct


著者名:

Eun Hyuk Kim, Jun Lee and Sung Ho Jang


雑誌名:

NeuroRehabilitation. 32: 583-590.


ポイント

1) 中大脳動脈領域の脳梗塞患者を対象に,皮質脊髄路の拡散テンソルトラクトグラフィーで,運動機能の予後予測が可能かどうかを調べた.

2) 皮質脊髄路の連続性が保たれていたグループは,不連続性を認めたグループと比較して,6ヶ月後の運動機能回復の程度が有意に大きかった.

3) 発症早期における皮質脊髄路の拡散テンソルトラクトグラフィーの所見は,運動機能の予後予測に有用であることが示唆された.


中大脳動脈領域の脳梗塞患者の特徴と脳画像解析を用いることの有用性

中大脳動脈(MCA)領域の脳梗塞は,最も一般的なタイプの脳梗塞である.MCA領域に梗塞を認める場合,ほとんどの症例で運動機能の顕著な低下が生じる.これは,MCA領域に,“運動”を司る皮質脊髄路(CST)が存在するためである.そのため,CSTの状態を適切に評価することで,MCA領域の脳梗塞患者の運動機能の予後を推定できる可能性がある.

これまで,臨床所見や放射線学的所見,電気生理学的手法を用いてMCA領域の脳梗塞患者の予後予測を試みる研究がなされてきた.しかしながら,上記の手法はCSTを直接的に可視化できない点で限界を有する.その一方で,拡散テンソルトラクトグラフィー(DTT)は,CSTの構造と連続性を三次元的に可視化することができる.これまでDTTを用いた運動機能の予後予測の有用性が報告されているものの,MCA領域の梗塞患者を対象とした研究はない.


本研究の目的

本研究は,MCA領域の脳梗塞患者を対象に,CSTのDTT所見が運動機能の予後予測に有用であるかどうかを調査した.


方法

対象:

MCA領域の脳梗塞患者37名であった.(初発,発症早期)


臨床評価:

発症時と発症から6ヶ月時点において,以下の評価を実施した.

 麻痺側上下肢の運動機能障害の程度:Motricity index(MI)

 麻痺側手の運動機能障害の程度:modified Brunnstrom classification(MBC)

 歩行障害の程度:Functional Ambulation Category(FAC)

 梗塞の体積:T2強調画像を用いて,梗塞病変の体積を推定した.


拡散テンソル画像の解析

描出されたCSTよりFractional anisotropy(FA)値を基に,以下の通り分類した.

 A群:CSTの完全性が保たれている.

 B群:CSTの連続性が梗塞部で途絶えている.

 C群:CSTが梗塞部に達していない.

加えて,FA比(罹患側CST/非罹患側CST)を算出した.


結果

発症から6ヶ月間の回復過程を分析した結果,A群はB群と比較して,MIの有意な改善を認めた.また,MBCとFACは,B群ならびにC群と比較してA群で有意な改善を示した.また,FA比はMIやMBC,FACスコアと有意な相関関係を示した.本結果は,MCA領域の脳梗塞患者における発症初期のCSTのDTT所見が,6ヶ月後の運動機能の予後予測に有用であることを示唆している.

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