タイトル:
Effects of repetitive peripheral magnetic stimulation on shoulder subluxations caused by stroke: A preliminary study
著者名:
Kenta Fujimura, Hitoshi Kagaya, Chiharu Endou, Akihito Ishihara, Kozue Nishigaya, Kana Muroguchi, Hiroki Tanikawa, Masayuki Yamada, Yoshikiyo Kanada, Eiichi Saitoh
雑誌名:
Neuromodulation. 2019; http://doi.org/10.1111/ner.13064
ポイント
1) 脳卒中後の肩関節亜脱臼に対する反復的末梢磁気刺激(Repetitive peripheral magnetic stimulation; rPMS)の効果を検討すること.
2) 介入後,肩峰-骨頭間距離(acromio-humeral interval; AHI)が減少し,さらに痛みや運動麻痺が改善した.
脳卒中後の肩関節亜脱臼
脳卒中の発症後,しばしば肩関節亜脱臼が発生する.その発生率は報告によって様々であるが,17-81%と報告されている.肩関節亜脱臼の病態には,肩関節周囲の筋力低下と上肢の重さが影響するとされている.脳卒中後,多くの患者は肩関節の痛みを訴えるが,その多くはこの亜脱臼が原因とされている.
肩関節亜脱臼に対する代表的な介入方法として,ポジショニング,スリング,装具,神経筋電気刺激(Neuromuscular electrical stimulation; NMES)が挙げられる.
肩関節亜脱臼に対する物理療法
NMESは,肩関節亜脱臼の改善ならびに肩関節痛の寛解に効果的とされる.実際に,NMESの効果を検証した先行研究では,棘上筋と三角筋後部線維に対する刺激で肩峰間距離が減少し,肩関節の他動運動中の疼痛が軽減したことを報告している.
一方,NMESは,刺激中に痛みや不快感が誘発されやすいことも指摘されている.さらに,治療の際は刺激部位を露出する必要があり,手間や患者の心的負担を要す.
近年,脳卒中後の機能障害に対する新たな治療法として,rPMSが注目されている.rPMSは,磁束により作られた「渦電流」が筋線維を刺激し収縮させるシステムである.皮膚の侵害受容器を刺激することなく,末梢神経や筋肉を刺激することが可能であるため,NMESと比較して痛みが誘発されにくい.また,洋服の上からでも刺激することが可能である.
本論文の目的
本研究の目的は,rPMSを用いた介入が,脳卒中後の肩関節亜脱臼を改善し得るかどうかを調査すること.
方法
対象:
脳卒中片麻痺患者12名
rPMSによる介入方法:
患者は,7回/週,3時間/日の一般的なリハビリテーションを受けた(神経筋促通,関節モビライゼーション,ストレッチを含む).
rPMSの治療は,5日間/週,17分間/日で,計4週間実施された.刺激方法について,患者は椅子座位とし,上肢は膝上に置かれ,三角筋後部線維と棘下筋を同時に刺激した.1回の刺激時間は2秒間(周波数:30Hz),非刺激時間は3秒とし,合計100サイクルの刺激を行なった.
評価項目:
以下の項目を介入前後で計測した.
亜脱臼の程度:AHI
痛み:日常生活における肩関節痛のNumerical Rating Scale(NRS),rPMS刺激中の疼痛のNRS
筋緊張:肩関節内転筋,肘関節屈曲筋のmodified Ashworth Scale
運動機能:Fugl-Meyer Assessment scale(FMA)
結果
全ての患者は,脱落することなく本研究のプロトコルを完遂した.また,rPMS中に痛みを訴えた者はいなかった.さらに,AHI,日常生活動作中の痛み,肩関節外転可動域,FMAは治療後に有意な改善を認めた.
本研究より,rPMSは,脳卒中後の肩関節亜脱臼を改善させるとともに,肩関節痛や上肢の運動麻痺の改善に有用であると思われた.rPMSは疼痛を誘発することなく施行でき, NMESに代わる新たな治療法となる可能性が示された.
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