タイトル:
Development of new rehabilitation robot device that can be attached to the conventional Knee-Ankle-Foot-Orthosis for controlling the knee in individuals after stroke
著者名:
Kawasaki Shihomi, Ohata Koji, Tsuboyama Tadao, Sawada Yuichi, Higashi Yoshiyuki
雑誌名:
IEEE Int Conf Rehabil Robot. 2017
ポイント
1) 脳卒中片麻痺患者の歩行時の膝関節運動を制御することを目的とした歩行ロボットを開発した.
2) 本研究の目的は,開発した歩行ロボットが歩行パフォーマンスや運動パターン,筋活動に及ぼす影響を分析することであった.
3) 介入後,各歩行パラメーターに改善を認めた.
脳卒中患者に対するロボットを用いた歩行リハビリテーション
近年,様々なリハビリテーションロボットが開発されており,臨床応用されてきている.その効果は,多くの研究で報告されているが,歩行ロボットの効果については一致した見解は得られていない.外骨格型ロボット(身体に沿って堅いフレームで覆う構造をなすロボット)を用いた歩行訓練の効果を調べた先行研究では,セラピストによるアシストと比較して,改善効果は限定的であったことを指摘している.その理由として,歩行パフォーマンスの改善は,トレーニング中のエラーに対する修正(運動適応)が重要となるが,外骨格型ロボットの装着によってエラー量が減少することで,運動適応が制限される可能性が考えられている.
一方,ウェアラブルタイプのロボット(身体に身につけるタイプの軽量なロボット)は,一定の改善効果を認めることが報告されている.これは,外骨格型ロボットと比較して,ウェアラブルタイプのロボットはさほど運動を制限しないため,運動のエラーに基づく運動適応が促されるものと考えられる.
このように,脳卒中片麻痺患者の歩行ロボットは,ロボット構造によって効果が異なり,外骨格型ロボットよりもウェアラブルタイプのロボットでより高い改善効果が期待される.
開発したロボットについて
脳卒中片麻痺患者の代表的な異常歩行に,「膝関節の運動パターンの異常」が挙げられる.例えば,Recurvatum kneeパターンやBucking kneeパターン,Stiff-kneeパターンなどが知られている.このような運動異常は,歩行速度や歩行効率に悪影響を及ぼすため,それらを改善するためのリハビリテーションは重要である.
上記のような膝関節の問題に対して,我々は従来の長下肢装具に装着するタイプの新しい歩行ロボットを開発した.この歩行ロボットは,歩行中の膝関節運動をアシストすることで,膝関節の障害に起因した異常歩行を改善することを目的としている.リハビリテーションロボットの多くは,多関節の動きを制御するために設計されているため,モーターの積載などの影響から重量がある.一方,本ロボットは,麻痺側の膝関節運動のみを制御することで軽量化を実現しており,臨床現場での高い実用性を目指している.
本論文の目的
我々の開発した歩行ロボットが歩行パフォーマンスや運動パターン,筋活動に及ぼす影響を調査することである.
方法
症例
脳卒中片麻痺患者17名
取り込み基準:
① 180日以上経過した脳卒中片麻痺患者
② 3分間以上,自立歩行が可能である
③ 実験課題を理解することができる
除外基準:
① 歩行を制限するような疾患(下肢整形外科疾患やパーキンソン病,心臓疾患など)の有無や既往など
検証方法
参加者に対して,ロボットを装着した状態での歩行測定を3試行実施するよう求めた.
試行1:ロボットによるアシストがない状態での10m歩行(BA)
試行2:ロボットによるアシストがある状態での10m歩行(WA)
試行3:試行1と同条件での計測を実施した.(AA)
評価項目は,歩行速度,歩数,麻痺側膝関節角度,両脚の筋活動(大腿直筋・半腱様筋・前脛骨筋・外側腓腹筋・
ヒラメ筋)とした.
結果
BAと比較して,WAで有意な歩行速度と麻痺側の膝関節屈曲運動の改善を認めた.また,歩数は有意に減少した.また,AAもBAと比較して同様の結果であった.筋活動については,BAと比較し,AAで大腿直筋,半腱様筋,ヒラメ筋の有意な筋活動の増加を認めた.
本結果より,我々は開発したロボットは運動学的・筋電図学的な変化を引き起こし,さらには歩行速度を改善し得ることが明らかとなった.
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