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執筆者の写真むさリハ研究所

ロボットスーツHAL腰タイプを装着することで,エクササイズ中の心肺機能への負担を軽減できる!

タイトル:

Effects of a lumbar-type hybrid assistive limb on cardiopulmonary burden during squat exercise in healthy subjects

著者名:

Hiroki Watanabe, Akira Koike, Yo Joon Pak, Longmei Wu, Hiroshi Kubota, Hirotomo Konno, Akira Sato, Hiroaki Kawamoto, Akira Matsumura, Kazutaka Aonuma, Yoshiyuki Sankai, Masaki Ieda


雑誌名:

Journal of Clinical Neuroscience. 66: 226-230. 2019


ポイント

1) HAL腰タイプは,リスク管理の観点(心肺機能への負担軽減)から,心臓リハビリテーション対象患者のエクササイズに適応できる可能性がある.

2) 本研究では,健常者を対象に,HAL腰タイプの装着がスクワットエクササイズ中の心肺機能にどのような影響を及ぼすかを調査した.

3) 酸素摂取量,二酸化炭素排出量,分時換気量,主観的運動強度は,HALを装着することで軽減した.


ロボットスーツHALとは

ロボットスーツHALとは,装着者が筋力を発生させようとした時に,皮膚表面の生体電気信号を検出することで作動し,装着者の身体機能を支援・改善・拡張するためのパワードスーツである.HALには,いくつかのタイプが存在し,これまでに「下肢タイプ」,「単関節タイプ」,「腰タイプ」が開発されている.



今回着目した「腰タイプ」は,アシストするのは股関節伸展運動のみであるが,「下肢タイプ」と比較して軽量であることが最大のメリットである(下肢タイプ:約14kg,腰タイプ:2.9kg).腰タイプを用いた先行研究では,重い物を頻回に持ち上げる際の運動パフォーマンスの向上や腰の疲労を軽減したことが報告されている.


心臓リハビリテーションにおけるロボットスーツHALの応用可能性

心疾患患者を対象とした心臓リハビリテーションにおいて,「運動療法」は重要な要素であり,単に身体機能の改善のみならず,生活の質の向上に寄与することが明らかとされている.しかしながら,例えば重度な心疾患患者に対して運動療法を提供する場合,心肺機能や身体機能の低下が著しいと一定の負荷量に耐えられずに,十分な運動量を提供できない場面がしばしば存在する.HAL腰タイプを装着し,運動療法の遂行を適切にアシストできれば,重症度に関わらず一定の運動量を担保することが可能となる.


本論文の目的

心臓リハビリテーションの運動療法として一般的なスクワット運動を用いて,HAL腰タイプの装着の有無における心肺機能への影響を調査することである.


方法

対象:

健常者12名(平均年齢:33.1±11.2歳)


スクワット運動のプロトコル:

3分間の連続したスクワット運動を,① HAL装着無し,② HAL装着有りの2条件でそれぞれ1回ずつ実施した.スクワット運動は,立位の状態からしゃがみこみ(膝90°屈曲),その後再び立位に戻ることとし,1分間に20回の頻度で実施した.


評価項目:

心拍数,血圧,酸素摂取量,二酸化炭素排出量,分時換気量,ガス交換率,主観的運動強度(ボルグスケール)をスクワット運動の開始から終了まで1分毎に測定した.これらの指標をHAL腰タイプ装着の有無で比較した.

結果

HAL装着無しと比較して,HAL装着有りでは運動中の心拍数(開始1分時点,開始2分時点)に有意な高値を,拡張期血圧(開始1分時点)に有意な低値を認めた.また,酸素摂取量(開始3分時点)と主観的運動強度はHAL装着有りで有意な低値を認めた.本研究結果より,HAL腰タイプは,健常者におけるスクワット運動時の心肺機能への負担を軽減し得ることが明らかとなった.今後,心臓リハビリテーション対象患者を対象とした臨床試験によって,HALを用いた新たな心臓リハビリテーションの確立が期待される.

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