むさリハ研究所

2020年8月7日

ロボットスーツHALを用いた脳卒中片麻痺患者の歩行リハビリテーション

最終更新: 2020年10月26日

タイトル:

Development of an assist controller with robot suit HAL for hemiplegic patients using motion data on the unaffected side.

著者名:

Hiroaki Kawamoto, Hideki Kandone, Takeru Sakurai, Ryohei Ariyasu, Yukiko Ueno, Kiyoshi Eguchi, and Yoshiyuki Sankai

雑誌名:

Conf Proc IEEE Eng Med Biol Soc. 2014; 3077-3080.

ポイント

1) ロボットスーツHALに,非障害側下肢の動作パターンに基づき動作支援を行う制御方法を実装した.

2) 本制御方法による歩行支援によって,脳卒中片麻痺患者の「歩行の左右非対称性」が改善した.

ロボットスーツHALとは

ロボットスーツHALとは,生体電位信号を読み取り動作する世界初のパワードスーツである.装着者の腰や下肢に装着する外骨格構造と,股関節や膝関節の関節モーター,装着者の様々な情報を読み取るためのセンサーシステムから構成されている.

ロボットスーツHALを用いた動作支援はコンピューターの様々な制御方法によってなされるが,新たに非障害側下肢の関節運動を基に,運動を生成するシステムを開発した.本システムは,非障害側を基準とした動作支援を行うため,脳卒中片麻痺患者で問題となりやすい「歩行の左右非対称性」の改善に寄与する可能性がある.

本論文の目的

新たな制御方法をHALに実装し,脳卒中片麻痺患者の歩行パターンが変化するかを検証した.

方法

対象:

対象は,脳卒中による右片麻痺を呈した63歳の男性であった.対象の歩行は短下肢装具と杖を使用し,麻痺側の遊脚期において膝関節屈曲が困難なため「ぶん回し歩行」を呈していた.

介入方法:

介入は,週1回の頻度で4週間実施した.介入時間は60分間とした.

前半の2週間は,主に治療者の観察と装着者の主観的報告に基づき,パラメーターを調整した.

後半2週間は,前半2週間で固定されたパラメーターで歩行訓練を実施した.

評価項目:

三次元動作解析装置VICONを用い,左右の股関節と膝関節角度,立脚期時間,遊脚期における踵部と床面との距離を,HALの装着の有無で比較した.

結果

HALを装着していない状態での歩行について,患側の股関節・膝関節の屈曲角度は健側と比較して顕著に低下していた.また,遊脚時の膝関節屈曲運動は,滑らかな軌跡を描いていなかった.

一方,HALを装着した状態での歩行について,患側の股関節・膝関節の屈曲角度は増加を認め,健側と同等となった.また,遊脚時の膝関節屈曲運動は滑らかな軌跡を描いた.

加えて,膝関節屈曲角度,立脚期時間,遊脚期における踵部と床面との距離は,HALを装着することで左右差が減少した.

本実験で用いた制御方法は,脳卒中片麻痺患者の「歩行の左右非対称性」を改善し得る可能性が示された.今後は,様々な歩行パターンへの適用を検討する予定である.